みなさん、さようなら

わたしが産まれた時お父さんとお母さんはどんな顔をしていたんだろう。わたしの名前を知った時お兄ちゃんはどんな顔をしていたんだろう。知らなくてもいいことだけどなんとなく気になった。

あなたがわたしの名前を呼ぶ時どんな顔をしていたかわたしは全く思い出せない、声もよく分からない。いつもより低かったのか、ちょっとかっこよかったのか、照れていたのか。はっきりと思い出せたらよかったと思う?それはあなたがいまわたしの隣にいても嫌がるのかな。

ハッピーバースデーの歌を歌いながら、わたしの名前がろうそくに揺れながら、わたしが産まれる時をひとつひとつ振り返っていたらきっと息苦しくなる。うれしい瞬間も悲しい瞬間もあるから。それでも名前を呼ばれると、遠くにあったものがすぐに近くに戻ってきた感覚になってちょっとだけ安心する。元にあった場所へと戻ってくる、そこはわたしが忘れていたところで捨てたいけど捨てられない場所。

いつかまたわたしが産まれるなら、ずっとここにいたいと思える場所を見つけてハッピーバースデーを映画に出てくるような花束とケーキと一緒に迎えたい。