観覧車のてっぺんで恋に落ちた

一度きりの夜だと思い知った。あのとき、夜の電車で、向かいに人がいない小さな席で隣に座ったときキスしてしまえばよかった。酔ったっと適当なことを言って手を絡ませればよかった。彼氏がいるのに、彼とキスしたいとかいろんなことを望む時点で最低なのだから、こんなことになるならあのときわたしは彼と。

初めて二人で飲んだとき、彼はわたしのことをラブホに案内した。下手くそな誘い方で、誘われてると気付かず結局周りのカップルを冷やかしただけだった。彼だって何か起こしたかったのかもしれない。ただ理由が足りないとお互いに思っていたのだ。まだ知り合って数週間しか経っていないのに、相手を望むのはおかしいと理性が残っていた。馬鹿になれたら、あのときのわたしたちが一番ベストなタイミングで一つになれたと思う。

次こそは、と決めてからわたしはいつもの悪い癖で距離感を守らず仲良くしようとしまって、だめになってしまった。好きと言ったわけじゃないし言われたわけでもない。静かに火が消えるように、彼はわたしに飽きてしまったのだと思う。たいしたことは何も起きなかった。とことん最低になる勇気もなく、わたしは生まれて初めて失恋した。大人になって好きな人とうまくいかないのは初めてだ。気をぬくと、すごく好きだったと思い出してしまいそうになる。何も起こらなかったのがただただ悲しいし一生悔やんでいくと思うと彼とのことを全部忘れたくなった。それでもこうやって日記にして寂しい時は読み返して甘かった時間に浸るほど、なかったことにしたくないしできないでいる。好きだったけどもう大丈夫と思える日と、彼とまた仲良くなる日はどっちが早いんだろう。