ばかなことの続きを

ときどき敬語になるところとか本当のことを言わずにはぐらかすところとかずるいなって思う。

あれから彼とはなんだかんだ長電話を繰り返してごはんの約束もして、昨日は突然会うことになった。会ったらちゃんと聞こうと決めていた。電話で好きな人の話をされてまるでわたしのことが好きかのように反応したからだ。酔った勢いでわたしのこと好きじゃないならちゃんと言って、と怒ったら、こわいこわいとまた笑ってはぐらかされた。何度聞いても、落ち着けと焦るなの繰り返しで否定も肯定もしない。好きな人の話も全部嘘のような気がする。別れるまで何度も好きな人のことを聞いたが結局教えてくれなかった。

飲み終わったらもうこのまま帰るのか思いきや、彼がなんかないかなーと言って歩くのをやめて周りを見渡す。このへん、ラブホとかキャバクラとかあるんだよ。へえーそんなふうに見えないけどと適当に返したら案内してやると歩き始める。ラブホを一つ見つけてはうわーと言って次のところに案内される。彼は5年間彼女がいなくてホテルにも入ったことがないらしい。それも本当かよくわからない。彼はわたしとカップルを装って入り口を通ってパネルだけ見つめて出ていく。なんだこのゲーム。まだ一緒にいたかったからいいけど。

こんなのに付き合ってるわたしはもう女として見られてないと諦めてからはもうやけくそだった。下手なぶりっこもしたしあっちに行きたいとわがまま言って暗い夜道を歩いたりした。誰もいない通りを、彼はSPみたいに守りながら一緒に歩いていた。それがおかしくて何度もわたしは笑った。無駄に近くの川を覗き込んで彼を困らせた。困らせたのは初めてだったからそのときだけわたしは彼に勝っていたんだと思う。道路を歩いてるときや車が近づくとき彼の手がわたしの体に触れた。ふらふら歩くわたしの肩を持ってまっすぐ歩かせてくれた。彼には妹がいるからわたしのことをそういうふうにしか見えていないんだろう。それでも触れるたびにどきどきした。

でもやっぱりほとんどのことをはぐらかしたりたまに馬鹿にするようなこと言ったりしてくる彼を信じられない。次会うときには普通に仲良くすると決めた。ムキにもならない、隙を見せず好きな人のことも聞かない。彼の冗談に付き合っていよう。昨日のことは思い出にする。思い出にするならもっともっとばかなことをやればよかった。寝るまで、わたしは昨日のことを甘くてばかな思い出にする。おやすみ、さよなら。