魔法使いができないこと

好きな男の子と一緒にいるところを想像するとわたしはしゃがんでいて彼を見上げている。

他にも好きな人たちや会いたい人たちと一緒にいるのを想像すると泣いている。

 

どうしたの

なんでかわかんない、わかんない

 

実際は外で会ってるから泣かないように頭の中は設定されてて泣かないけど、きっと何かの弾みがあれば泣くと思う。泣かないでって言われた時、泣きそうになったのはその証拠。

溜まってるのはいいこともいやなこともあって消化できずにいるから、自分は一回り大きくなってる。成長した意味の一回りじゃない。消化して吸収していらないものは捨てて生きていきたいのに難しい。

いつも口から出まかせばっかりしゃべってるってYUKIは歌ってて最近のわたしだと思った。物事だけ増えて心はからっぽなまま何を聞かれてもうそを並べるしかない。ほんとのことは溜まってるもののせいで見えなくなった。

とんとん拍子に最近はいいことが続いていくけどまた溜まっていくのはいやだ。ちゃんと自分のものにしよ、ちゃんと生きよ。

 

明日は流れ星が落ちる日

傷をつけようとしたけどこれに頼るのは良くないと思ってやめた。わたしえらいでしょ、誰もいない部屋でぽつりとつぶやく。独りじゃないし、誰かに言って話したら楽になれそうな気がするのに言ってほしい言葉が見つからないからわたしは誰もいないところにいる。誰かいるところ。友達や家族には言いたくない。彼氏は困った顔で抱きしめると思う。それはきっと言葉以上ですごく大事なものだ、でもそれじゃない。わたしは言葉がほしい。見つからなくてずっと、ずっと探してる。そのせいで男の人と変な関係になった。ごめんなさい。

 

ともさかくんもその一人だ。高校二年生のとき教科書を貸したらお礼に何かするよってともさかくんが言ったから、わたしはその求めてる言葉を探すために彼と一緒にいることにした。割り切った関係、会いたい時に会って話して確かめ合う。ともさかくんは嫌がらず、わたしといてくれる。一緒に海を見に行った。学校をさぼって公園で待ち合わせしたこともある。部屋には何度も行った。泣いたら涙のあとをなぞってキスをしてくれた。少女漫画みたいなともさかくんにも苦しくなる時はあって。

ともさかくんに会いたくなる時、ほしいものが一番近くにある気がするから、離れられないから、まだ、一人にしないで。

 

tonight/supercar

愛も平和も小さくなれ

実はセンターが終わってからまったく勉強していない。センター前の一週間だけ一日中勉強して、それでわたしのやる気は終わった。もう2週間経つ。2週間あったら何ができたんだろう。マイナス3キロ、プラス英単語1000個、プラス公式50個、それができたらレベルが3ぐらいあがったかもしれないし合格に一歩近づいたのかもしれない。でももう数を数えるのは疲れた。

何をしていたか思い出せるのは、初恋の人のことを考えたり思い出したりしていたこと。月9のイケメンが初恋の人に似てるから一気に今まで抑え込んでた気持ちが爆発したんだと思う(抑え込むのはわたしの悪い癖だ)。

本名で検索したら、初恋の人のインスタを見つけた。海外の大学に留学してるらしい。たぶん交換留学じゃない。じゃあ4年間帰ってこないのか、成人式で会えないんだ、もしかしたらずっと海外にいるのかも、とかぐるぐる考えて、これから受ける私立の大学が彼の大学に留学できるか調べた。調べて調べて、何も出てこなくて、疲れて、なんか燃え尽きた。たぶんほとんど燃えた、どれくらいか数えない、燃えた。他の人からしたら、ひくようなことしたけどわたしはいま少し嬉しい。彼を見つけられた達成感ではなく、これで本当に忘れられるかもしれないって思えたから。こんな気持ちは早く消化しておきたいから。

そういう気持ちを消化したら、変な人間からましな人間になれるといいな。

勉強のことも、偏差値が高いとか低いとかに執着する気持ちは消化したい。そしたら、いつも顔色をうかがうこともないし一人でも大丈夫になれる気がする。

わたしの今のところの、人生の目標、消化すること。二つとも消化できたら、またちゃんとここに書きたい。

触れる前に、目をのぞきあって、それから

「どんしてそんなことしたんですか」

「そこに男の子しかいなかったからです」

「……そこ?」

「はい。……あの、何年か前にカフェに行ったんです、おしゃれな感じの、チョークでメニュー書いてるような。小腹減ったし何か食べようと思って、入ってみました。人はそんなにいなくて、店員さんも作ってる人も若い人って感じでした。

案内されてメニューを渡されて、わたしはサラダを選びました。写真がなくて、どのサラダのメニューも入ってる野菜が書いてあったんですけどどれもピンと来なくて。でもそんなにお腹空いてないし家であんまり食べないからサラダにしたくて。知ってる野菜が一番多いサラダを選びました。

すぐにサラダが運ばれてきました。よし、食べようと思ったら、あれってなって、あっ、ドレッシングがないって。かかってる感じもないし皿の底の方にあると思ってフォークで混ぜてみてもなくて。」

「それ、そのまま食べるサラダだったんですか」

「わたしもそうだと思って、そのまま一口食べてみました。……あんまり美味しくなくて美味しくないっていうか、素材の味だよなー……。とりあえず水を飲んで、どうしよってなって。そしたら机に調味料が並んでたんです。よくあるじゃないですか、ファミレスやラーメン屋で、塩とかこしょうとか。そのお店はたくさんあって、それ以外にお酢とマヨネーズとオリーブオイルがおいてありました。」

「オリーブオイルはサラダに合いそうですね」

「はい、英字がいっぱい書いてあるおしゃれな瓶に入ってあっ、これだと思って、オリーブオイルだと思ってかけたんですけど、美味しくならなかったんです。何か足りないと思って今度はお塩とこしょうとお酢をちょっとかけてみました。小学生のとき家庭科で混ぜるとドレッシングみたいになるって習ったしと思ってかけてみました。何がだめだったかよく思い出せないんですけど……それもだめでした。」

「……マヨネーズしかありませんね」

 「マヨネーズって微妙じゃないですか。サラダにマヨネーズを、まあかけなくはないですけど、かけるとして有名なのはゆで卵ぐらいじゃないですか。マヨネーズ置いてるお店もあんまりないし。でもそこにはマヨネーズしかなかったんです。そこに、置いてある調味料はそれしか、マヨネーズしかなかったんです。

……わたしにとって、男の子は、そのマヨネーズでした。苦しんでるときわたしの周りにはいろんな人がいて、でも何がだめだったかわからないけど、家族も友達も先生も嫌なものになっちゃってたんです。‪もうどうしようってなってて、全部だめじゃんってなったんですけど、全部じゃありませんでした。男の子がいました。わたしの知ってる範囲でどうにかできそうなのは男の子しかいなかったんです。中学から女子校に通って男の子と触れ合うことはなくて、小学生のとき男の子はいてそのときはすごく楽しかったんです。それで男の子と触れ合ったら何か変わると思いました。……憂鬱しかなくて周りにあるものが全部嫌なものに見えてたら、そこにないものが希望だと思っちゃうじゃないですか、これがあったらって手を伸ばしたくなるじゃないですか。……ただそれだけです。」

「マヨネーズは美味しかったですか」

「えっ」

「そのサラダにマヨネーズ」

「うーん、なんかいろんな味がして、結局よく分かんない感じでした」

「やっぱりそれ、そのまま食べるサラダだったんじゃないですか」

「素材の味ですよ?」

「そうですねー……あなたが野菜だったら僕はそのまま食べます」

「……えっ」

「僕はきゅうりに塩かけるし、アボカドにはしょうゆたらしますけど、あなたが野菜だったら何もいらないです、だから男の子とかいらないです」

「……なる、ほど」

「はい」

「わたしがきゅうりでも?」

「はい」

「わたしがアボカドでも?」

「…はい」

「いまちょっと迷いましたよね」

「すいません…」

「変な人、でも」

「でも?」

「君が野菜だったら、わたしはガブッと食べます」

「ガブッと?」

「はい、そのままガブッと」

「変な人だ」

「お互いさまですね」

「今度そのお店行って、そのサラダ食べてみたいです」

「いいですね、行きましょう、わたしも正解知りたいし」

「正解、知れますかね」

「お店出た後に気付いたんですけど、店員さんに聞けばいいんですよ」

「たしかにそうですね」

「はい」

「楽しみですね」

「楽しみです!」

ストーカー級 続き

今日も初恋の人が夢に出て、うわー!ってなってネトストしちゃった。

こうやってだんだん消化していく方向を間違えると変になりそう。月9のイケメンにも似てて、タイプっていうのもあるけど、見ちゃってる。

気持ちを大切にしまっておくんじゃなくて、消化するために、名前は適当につけて日記にすることにした。二十歳になったら消す。

http://nanos.jp/otokonokoto/

痛みを届ける方法

昨日はクリスマスだったから、最近買ってもらったハートがいっぱいの赤いパジャマを着た。赤もハートも愛って感じがするから。溢れた愛を包んで寝ればいい夢を見れるかなって思ったら見た夢がどんなんだったか忘れた。たぶん幸せな夢じゃない。彼氏と電話できるかなと思ったけど電話できる?って聞けなくて結局できなかった。今年のクリスマスはそれで終わり。

 今日は体調が悪くてずっと寝てた。気持ちも下がって、気持ち悪いと寂しいがぐるぐるしてた。夢もたくさん見た。好きな人に手を伸ばしてるところで目が覚めた。掛布団のシーツのカバーにたまたま手が入ったまま伸ばしていた。つっかかって起きたらしい。夢の続きが見れるように目をつぶったけど、その後どんな夢を見たか忘れた。

だいたい夢の中にでる好きな人は定まってる。初恋の人だったり好きなアイドルだったりテレビにでてる有名人だったり。その人たちの夢を見るとすごく寂しくなる。でも彼氏は全く出てこない。会ってから2回ぐらいしか出てきてない。好きなのに何が違うんだろう。

これが夢で本当によかったと思う。想像だけでよかったと思う。寂しくなると会いたくなる人に出会ったことはない。彼氏に会えない寂しさとは違う。かっこつけてるだけかもしれないし説明もできないけど、月に一回くる寂しい気持ちを想像でしか処理できなくてそこに好きとか愛とかいらないのに誰かを必要としたくなって。一回だけ付き合ってから彼氏に寂しいって言ったらごめんねってなったから言わないようにしてる。

最初は寂しい気持ちを紛らわせると思って付き合ってたけどすごく優しいから幸せになって前よりは減った。こうやってちょっとずつ無くなればいいのに。言葉で説明できないことはなくなってくれないとどんどんつらくなる。

ここじゃなくてどこかにいたんだよね

大丈夫じゃなくても笑えるようになりたいって思っていたら、負の感情に鈍くなった。

さっき自殺した妹の話の記事を読んだら心がざわざわしていま悲しいんだなって思ったけど涙が全く出なかった。その記事がつまらないとか美談だとかそういうのじゃない。読んでいて本当にすごくすごく悲しかったんだと思う。たぶんなのは鈍くなったから。

うまく言えないけど、悲しいと感じたときのことを覚えてるからこのざわざわした感じは悲しいって認識できる。悲しくて泣くっていうより泣くから悲しいみたいな。

そういうのがいつからか分からないけどあって、泣くのも大きなきっかけがないとできなくなった。一人で泣くのが難しくなった。前は悲しいからこの曲を聴こうってなってたけど、逆でこの曲を聴きたくなるってことは悲しいんだって気づく。

医者が言うには不安や悲しいを押さえ込んで見ないようにしてるかららしい。悲しいとすぐに泣くけど、学校でそれをやると気まずくなるし心配されるから我慢しようと思ったから、押え込むくせがついたんだと思う。

ある程度は必要だと思うけど、すごく悲しいときまで我慢しなくてもよかった。他人に自分の悲しい気持ちを分かってほしい時は泣いたら伝わるけどわたしにはそれができない。心が変な感じになってる、としか説明できない。

あと自分だけにしか分からない悲しい気持ちの時に自分で自分のことを悲しかったねつらかったねって抱きしめてあげることもなかなかできない。そうやってどんどん心の中で小さなわたしが孤独になって体育座りして泣いて誰かを待ってるのが続く。

でもちゃんときっかけを与えれば、心の中の自分が泣いてることに気付いて抱きしめることができる。そのきっかけは、人だったり音楽だったり憧れの人が書く文章だったり。真っ白だった頭の中がぐちゃぐちゃしてちゃんと整理されて処理できる。そうやって今の状況から抜け出していきたい、来年の目標にしよ。