願いごとはひとつにして

眠れない夜。誰にも内緒で夜道を歩く自分を想像する。昼間や夕方は光があるぶん家も空も植物も優しい感じがするけど真夜中は全然ちがう、光はない、少し怖くて、でも逃げるようにして進んでいく。人は全然歩いていなくていつも窓からのぞいていた蛍光灯が近くて眩しい。不気味な黄色と緑が混じった色に虫が集まってる。掴めそうだった星とか月は遠い。
映画でえろ本の自販機の存在を知った。今もあったら面白いのに。それを買う人を盗み見たい。寂しい夜のおかず、500円。わたしのおかずは音楽とか小説とか。人間だったらよかったね。テレパシーを一方的に送って缶ビールを片手にわたしは歩き続ける。冷蔵庫から持ってきた飲めない缶ビールは夜道のパスポート、大人の階段の踊り場。これが飲める年齢になったら、大人になったら、こんな夜にも慣れてもっと大丈夫になれるのかな。寂しいをうまくまぎらわすのも、悲しいも苦しいもつらいもうまく、もっとうまく。いまは子どもだからお金も足りないし好きなときに好きなように行動できないけど大人になったらうまく生きれてると思うの。
眠くなってきた。いつものベッドに潜って夢に願いごとをする。おやすみ。