いつだって素直になれたはずだ、あなたもわたしも

大丈夫、わたしはあなたなんかどうでもいい。

バイトがない日は好きな服を着てラメがたっぷりのアイシャドウを瞼にのせる。今日は、はっきりしたピンクのリップを久しぶりに選んだ。いつもは落ち着いた桜のようなピンクだからわくわくする。自分のための日を作る過程がすごく幸せだ。外に出て街を歩いてもいつもと違う。周りの目なんか気にならない。颯爽と高いヒールで進む。怯まずどこまでも行ける気がする。なんだ大丈夫、わたしはあなたがいなくたって一人で幸せになれる。

一昨日、3日ぶりに返信がきた。既読無視していたらまたLINEがきた。それだけでうれしくなった。それにその日は返信が来るのが早かったしバイトで嫌なことがあって、なんとなく電話をかけてみたが応答はなかった。次の日、相変わらずの冷たさで返信が来る。返信をするだけ彼にしては珍しいのだ。素直に、バイトで疲れちゃって話したかったと伝えたら、笑笑としか来なかった。

彼は、めんどくさいことが大っ嫌いだ。ましてや社員ならまだしもバイト仲間の相談事なんて、彼にとって利益がない。本当は冷たいからこそへらへらといろんな人と話し優しくするのだ。わたしにはどんどん冷たくなっていく。前に、わたしが彼氏と喧嘩してデートをやめたと伝えたら電話がきたことがあった。何やってるんだよ、と怒りながらも会いに来てくれた。彼のバイトが始まるぎりぎりまで一緒にいて、泣きそうで話せないわたしに今週ごはんに行こうと言ってくれた。大事にされてると思った。あれは夢だったのだろうか。反芻しては甘さに比例してどんどんつらくなる。そのごはんだって結局後輩の男の子も連れて3人で行った。

彼に振り回されるのはもうごめんだ。やる気のない返信は既読無視した。もしかしたらかけ直してくるかもと深夜まで起きてみたけど何もなかった。深夜の1時くらいまでなら平気でかけてくるひとだった。それくらいまで起きれるようになったのに、夜の静けさに寂しいと思う時間が増えただけだ。

今日は、それでももう平気だと思えたはずだった。誰かもわからない人とすれ違った。柔軟剤の匂いがあっという間に強気なわたしを殺す。あなたに似た匂いだった。