酔いから覚めたの、おやすみをもう一度

あなたのことがよくわかるからわたしは何もできなくなる。頭は良く回るのに身動きが取れない。そうやって何度ももうやめようと決めていた。なのに、これが最後、と終止符を打とうとするとそういう時に限ってあなたはちゃんとわたしのほうを向く。察するのが上手なのだ。二人でごはんに行こうと誘って断られたときもうわたしから連絡しないと決めたのに、その日から何度か彼から連絡が来た。わたしが彼氏と別れた、と伝えたときは、そう、なんで?と普通に返してきた。なんでこういうこと報告するのか分からない?と聞いても、さあわからないね、とはぐらかす。わかっているくせに、踏み込んでこない。わかっているからなのかもしれない。

でも、これでもう本当に最後。バイト前に30分だけ会いにいった。はっきりさせるために。会いに行ったら、移動しようと人が少ないほうに向かった。付き合おうよ、と冗談で言うわたしを嫌そうな顔でそういうの恋愛とかめんどくさい、とかわす。女なんてこの世にいっぱいいるし執着なんてしないね。笑って話す彼を最低だと思った。やはり、ひまと言えば電話にでるわたしを都合良く扱えるようにしてきたのだ。怒ってやりたかった。ふざけるな、と言ってやりたかった。はっきりさせたくなかったのはわたしのほうだった。あなたの隣にいられればなんでもいいと思っていたけど疲れた。そんなことも好きとも言えず、時間になって、またいつものように仕事仲間みたいにお疲れ様と言われて別れた。二人でいるところをバイト先の人に見られたけどどうでもいい。変に噂になっても彼ならうまくかわせる。最後くらい思ったことを言ってやればよかったという気持ちと、このくらいならまた前みたいに戻って電話したりできるかなと淡い期待が残っている。そんな気持ちもわかって、二人でごはんにいくのも嫌がるんだろう。中途半端なのはわたしのほうだった。あなたはわたしのことをよくわかっていたんだね。