ひとりになるほうが簡単だ

頭のいい人が好きだけど、わたしは頭のいい人に嫌われるタイプだ。わかりやすい媚びうりと自信のなさからくるはりついた笑顔は自分でも鬱陶しくなる。頭の悪い年下の彼はわたしとぎこちなくキスをした。初めての経験ではないのに、何回も近づいては離れてやっとしたと思ったら、苦しそうに息を吐く。こんな姿を見てもかわいいなーと思うくらいだから、年下に好かれてしまうのだ。年上に好かれる親友だったら、そんな男冷める、とすぐに切ってしまいそう。わたしは余裕のある年上の人が好きなのに、相手のことも自分のことも許してしまう弱さはそんな人たちを遠ざけてしまう。

大人になりたかった。はっきりしないあの人の態度に、付き合わないなら他の女の子に連絡しないで、とむきになって拗ねたら、そういうところだよ、と嫌がられた。自分でも子どもみたいだと思った。あの人が好きなのはきっと、もっと自由で余裕があってあなたじゃなくても平気よ、という心構えのある綺麗な女の人だ。そうなりたかった。そしたらあの人に振り向いてもらえると思った。金曜の夜、わたしは好きでもない人とキスをした。同じ学科の男の子。気になる女の子が多すぎる、と前から話していたし、わたしに最近浮気してもいい気がしてきた、と言っていたから放課後カラオケに行った。思春期の男の子みたいだ。わたしと同じ子ども。わたしは彼じゃなくてもいいし、彼もわたしじゃなくてもいい。彼とのキスや言葉を思い出しては連絡したくなったけどやめた。執着してはだめだ。こんな関係に慣れればあの人に少しでも近づけるのだろうか。彼が欲しがる言葉や態度なら何でもわかる。どう言えば彼が照れて自分に夢中になるのか簡単に想像できるのに、あの人のはわからない。彼といるとその事実が余計に悲しくさせて、どんどん寂しくなる。もしかしたら負のループなのかもしれない。でもいまのわたしにはこれしか思いつかない。馬鹿じゃないの、とあなたが叱ってくれたらいいのに。