いつかのこと、繰り返すとき

「決めるものじゃない、恋愛は決めるものじゃないよ」

付き合ってる人にそう告げられた途端、目をそらして、主人公は顔を両手で隠して泣いてしまう。

「決めさせてごめんね」

好きな人がいる彼女を無理やり自分と結婚させようとしていた彼はそう続けて、主人公に謝る。そのシーンで自分も少し泣いてしまった。何を思い出してるかわからないまま。

あの人と飲みに行った。会話の最後に社交辞令で10月時間あったら飲みに行こうね、と送ったら、今日行けるよ、と返ってきた。10月になったばかりだった。二人で行くのは久しぶりだったけど、あの人は職場にいるときと変わらない格好で、話したのもみんなとあまり変わらなさそうなこと。それでも、この視線を独り占めできることも笑っているところを目の前で見られるのもうれしくて話してるときの記憶はふわふわしている。

居酒屋から出たのは22時くらい。まだ帰る時間じゃないとふらふら歩いた。あのときみたいに。酔って距離が近くなっているのも気づかないふりをしてコンビニでアイスを選ぶ。これおいしいんだよ。へえー、食べたことない。そんな普通の会話。好きじゃない、最低なやつだって思い始めたのに。もう二人で会わないって決めたのに。あの人を目の前にしてあのときと同じようにはっきりと感じてしまった。みんなにあの人は最低だと話したときわたしはどんな顔をしていたのか想像したくなかった。でももう決めるのも抗うのもやめる。帰り道、あなたが好き、と声に出してみる。また振り出しに戻った。