まだ壊れたままでいたい

まるで時間が巻き戻ったみたい。自粛期間、ほとんどあの人から連絡はなくて、映画を見たり運動をしたり、仕事に打ち込んでは達成感に満ち足りながらも一人の時間にたまに虚しくなった。最後にあってから数ヶ月経ってわたしはきれいになって仕事もできるようになってきて、前より胸を張れるようになったのに再会してもうまくいかない気がしていた。でも、仕事で会うようになってからは、また朝まで電話したり飲みに行ったりした。自粛期間、誰ともごはんにいかなかったらしい。家にいたくない人がそんなことできるのかと思ったけどそれが本当かどうかどうでもよかった。目の前でまたあの人が笑ってるのを見るのが楽しかった。みんなでいるときは小学生みたいにひどいことを言ってきて二人のときは優しくなるのも、他の女の子に優しくするところを見るのも慣れたものだった。
去年みたいに戻ったことがうれしい反面、この人の前では一生変われない気がしてこわくなった。相変わらずはっきりと嫌だと言えないこと、合わせてしまうところ、素直になれないこと。
好きなところを理路整然と伝えて告白してくれる人がいいと言われたときもそうだった。ふと考えてみるとぱっと思いつかなくて、なんだか志望動機を答えるみたいだね、と皮肉で答えてしまった。それに、電話で付き合おうと遠回しに言われたときも突き放してしまった。変わるのが怖かったから。

あの人の好きなところよりも嫌なところのほうが思いつく。それでも好きなの、と言ったらきっとあの人は意味わかんねえ、と言うだろう。わたしだってわからない。でもあなたといるとそう強く感じるの。他の人のいいところを並べても、デートらしいのができる人がいても。こんなにいろんなことがあったのに離れられないのもおかしいでしょ?言葉にできないことは不安になることもあるけど最後の決定打になるくらいには強いことだと思う。

求めるものに答えられないとやっぱりあの人はいつかいなくなってしまうんだろうか。あの自粛期間みたいに。でも、終わりはいつかくるから決めないでおく。