さよならも言わないで

突然何の音もしなくなった。CDを再生するみたい忘れないようにつけていた日記。読み返しても映像がぼんやり浮かんではすぐに消えていく。こんなにすぐに寿命がくるものなんだ。いつのまにか銀色の面は擦り切れてぼろぼろになっていた。好きな曲ほど再生する回数は多いからしょうがない。服もかばんも好きなものから順番に形が崩れて使えなくってしまう。壊れたものたち。それでも積もらせた思い出の数だけ捨てるのをためらってしまう。直せない傷を数えても悲しいだけなのに。
好きな人に好かれなかった。それだけじゃない。デートのために買ったワンピースもカラコンも、何事もなかったように振る舞うこと、どんな人よりも一番だったこと、どうにもならなかったことにしたこと、好きだったことすべてが報われなかったのが悲しい。会いたくないとか嫌いとか言われたわけじゃない。職場で会うことだってあるけど、なんとなく前には戻れない気がする。去年の今頃は朝まで電話したりLINEしたりしていたのに、この数ヶ月何もなかったから。こういう勘だけ当たってしまう。こんな勝手な気持ちを友達に話す気にはなれなくて、気持ちだけがただ沈んでいく。どうして聴こえなくなったんだろう。わたしの耳は何も変わらないのに。全部煙みたいだ。あったと思ったのに簡単に消えてしまった。